乗り越える
学校の行事には、学芸会、発表会、合唱大会等々みんなの前で何かを発表するというのがいくつかある。
うちの小学校でも、パフォーマンスディ、スピーチコンテスト、スピーチプレゼンテーション、コーラルフェスト等々ある。そして、もう一つ、数年前から行っている行事が“タレントショー”。「ん?何かの分野で才能を持っている子が、発表するの?」と思うかも知れない。日本では“タレント”というワードと教育はあまりそぐわないというイメージだが、海外の学校ではよくある発表会だという。
LCAのタレントショーは、LCAの児童なら誰でも、一人でもグループでも、上手でも下手でも(という言い方はちょっと失礼かな?)、どんなレベルでも、舞台の上で3分以内の出し物を発表できるというイベントだ。2月中旬に児童に要項が配られ、その後オーディション(これで落ちるということはなく、時間調整をしたり、順番を決める助けにするため)が行われる。歌、ダンス、ピアノ、バイオリン、手品、、、いろいろなパフォーマンスが登場する。多彩なその演目数は、実に30項目を越える。
今年初めてのジャンルは、たとえばエアーバンド。髪を、パンク風(?)に決めたボーイズ5人がサングラスをかけ、ドラム、キーボード、ギター、ベース、ボーカルをすべてエアーで演奏する。これは、はっきり言ってかっこいい!
一人でフラを踊る女の子、ギターの弾き語りやピアノの弾き語りもいる。自由で楽しくて最もLCAらしい私の大好きなイベントの一つだ。
今回、中盤にジャグリングというプログラムが入っていた。その名も、“ケンダマンとヨーヨーマン”。けん玉もヨーヨーも結構な腕前だ。ところが、出番を待ちながら練習しているときに、ヨーヨーのお皿の半分が飛んで行ってしまったらしい。どこを探してもないと言う。
青ざめた小4のヨーヨーマンは、こうなったら半分のヨーヨーでやるしかない、と試している。が、うまくいかない。そうこうしているうちに出番となり、彼らはステージの上へ。軽快なBGMに乗って、まずはケンダマンが技を見せる。さてヨーヨーマンはどうするのか、と見てみると、何と手ぶら。観客の注目が集まる、、、、、果たして彼は、踊った。
予定していた2分間の技はすべてケンダマンが担当し、ヨーヨーマンは終始ケンダマンを盛り上げる踊りに徹した。それも照れた感じではなく、もちろん困った様子も見せず、にこやかに全力で踊った。
これが彼らの出した解決策だったのだ。何て素晴らしい子どもたち!困難を自分たちで乗り越える力が、また一つついたに違いない。そしてもう一つ気づいたのだけれど、ヨーヨーの半分がなくなってから舞台に上がるまで、ヨーヨーマンは一度も不運だとかついてないとか、あきらめるだとかいう言葉を口にしなかった。次の方法をあれこれ考えて、できることはないかとチャレンジはしていたが、ネガティブな方向には行かなかったのだ。
本当に子どもたちには教えられることが多い。ところで観客はどう思っただろう。ケンダマンの技は見事だけど、隣で踊っている子は何のため?と不思議に思っただろうか。彼らの名誉のために知らせようか。いやいや、そんな言い訳はいらないよ、と一蹴されてしまうかも。彼らの精神の気高さでこちらまで心が清らかになった気がする。ありがとう。
【副学園長・山口千恵子】