LCA国際小学校

Teachers' Room先生たちの部屋

あなたは、変化できますか?

校長

LCAの理科室では毎年カイコを飼っていて、その成長を観察しています。カイコは、絹(シルク)という最高の繊維を得るために人間が改良した昆虫で、正確には「カイコガ」といいます。したがって、自然界では生きていけません。カイコは、卵から幼虫さらに繭(まゆ)を作って蛹(さなぎ)になり、羽が生えて成虫へ…と完全変態を身近に観察することができる理科教材です。また、みにくい蛾(が)があの素敵な繊維を作り出すなんて、子どもたちの「不思議」と思う好奇心を刺激するかっこうの教材でもあります。

1ミリくらいの小さな卵から、8センチくらいの大きな幼虫に成長します。外見はまったくのイモムシ状態です。その成長過程では脱皮を繰り返して大きく成長します。幼虫から蛹へ、そして蛹から成虫へと大きく姿を変えることも脱皮のひとつです。こうして、不思議な変化の繰り返しを短期間で見ることができます。

カイコガの一生は30日から60日ですので、平均をとって45日としましょう。いっぽう、人間は90才くらいまで生きるとします。するとカイコガの1日は人間の2年ということになります。カイコガの脱皮など大きな変化が1日かかるとすると、人間では2年かけて変化することになります。


成長とは変化。

カイコガの場合は、予めプログラミングされた成長過程にしたがって変化しているように感じます。いっぽう、人間はというと成長に及ぼす因子はとても複雑なようです。先日のエデュケーショナル・レクチャーでお話された脳科学者・西博士によると、人間の成長は、プログラミングされたもの、つまり遺伝的な要因もあるものの、環境の影響も大きく関わってくるとのことでした。

たしかに、精神的な成長について考えると、人間にとっては環境が大切だと思います。精神的な能力や心のありようを、的確に良好に習得するためにはどのような環境がよいのか?を、常に子どもの立場で考えなくてはいけません。人間らしい成長、そして人間にとって必要なことをいかに獲得して形成していくか。さらに、それぞれの子どもの個性とのマッチングもあるでしょう。それぞれの子どもが多くの人に愛され尊敬される人間になるためには、人間としての魅力がなくてはなりません。

魅力ある人間に成長するために、どんな環境が必要なのでしょうか?

カイコガの場合は、温度管理、雨風をしのぐ設備、空気循環、適切な餌やりが必要です。こうした物理的条件によって、絹(シルク)という美しい繊維を作ります。しかし、人間は違うようです。物理的な条件だけでなく「精神的な成長」が重要だからです。そのためには<他者とのかかわり>が必要だと考えます。

学校は、子どもが成長するためのひとつの環境といえます。校舎をはじめとする施設設備と教育活動、カリキュラムや先生やお友だちとのかかわり、つまり学校のハードとソフト、双方が適切な環境である必要があります。そして、大切なのは、その環境自体も成長(変化)をしなければならないということだと思います。

脱皮できなければカイコガが死んでしまうのと同じように、変化をしない学校は成長できずに死んでしまうのではないでしょうか。しかし、学校の成長は簡単ではありません。なぜならプログラミングされたものが存在しないからです。元々あるのは教育の理念だけです。したがって、教師は「子どもの成長にとって、学校がどうあるべきか」いつも子どもたちのことを考えながら、的確な判断と実行を行う必要があるでしょう。

私は「校長とは、学校を変えていく者」という意識を大切にしています。相手に変わってほしければ、自分が変わる必要があります。子どもに変わってほしければ、学校が変わらねばなりません。

また、成長する環境ばかりでなく、癒される環境も必要です。心の健康のために。カイコガの幼虫や、ガとなった成虫を見ていると癒されます。成虫のカイコガは、触り心地がとてもシルキーな感じでナデナデしたくなります。さらに、よく見ると顔がとってもかわいいのです。飛べないので簡単に手に乗せることができ、最近はペットとしても注目されているそうです。ガですので少し勇気がいりますが、触るとほんとうにシルクを実感できます。お子さんに聞いてみてください。

癒される環境を1つのコンセプトにしたLCAの校舎。「本物を感じて欲しい」と廊下に生の絵画を飾り、子どもの心を大切にする学園長の思い。さらには子どもたちのためなら、先延ばしせずにいつでも変わることをいとわない「子ども優先」の方針。LCAが成長(変化)するスピード感を私も大切にして、変化を続けていきたいと思っています。

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